心や身体に異変を感じたら
早めの受診と早めの治療を
悲しい経験をすることや辛いことがあった時には、多かれ少なかれ誰もが気分の落ち込みを感じるものです。そのような抑うつ状態は正常な心の反応で、日常生活の中でやがては薄れていくことになります。しかし、1日のほとんどの時間で気分が落ち込み、それが毎日のように2週間以上も続くような場合には、それはうつ病である可能性が高いと言えます。うつ病では気分の落ち込みに代表される心の症状のほかにも、睡眠障害や食欲の減退、疲労感やだるさなど原因のはっきりとしない身体の不調が起こることもあります。近年、うつ病に苦しむ人の数は増加しています。厚生労働省の3年おきの調査では、1999年に国内でうつ病と診断された患者数はおよそ44万1千人でした。しかし、その後2002年に71万1千人、2005年に92万4千人と急増し、2008年にはついに104万1千人を数えました。うつ病のメカニズムにはさまざまな説がありますが、まだはっきりとしたことはわかっていません。心理的な要因や社会的ストレスが引き金となることが多い一方で、これといった理由はなく発症している場合も見られます。うつ病では早めに医師の診断を得て、適切な治療を受けることが重要です。早期に対応を開始すればするほど治癒しやすく、また治療に必要な期間も短くて済むのです。しかし残念ながら、病気の初期の段階で医療機関を受診して、うつ病と診断されているケースそうは多くはありません。なぜなら、かかり始めの症状は自分では一時的な気分の落ち込みやちょっとした身体の疲れと区別がつきにくいものです。また、精神科や心療内科への抵抗感もあり、重症化してからやっと受診するという場合が少なくないのです。うつ病が悪化すると治療には多くの時間がかかり、長い間苦しむことにもなりかねません。早期の診断と治療のためには、まず心や身体の小さな異変への気づきがとても大切です。それには医療機関や公的機関などがホームページ上に掲載している、うつ病のためのチェックシートの活用がおすすめです。これを使えば用意された簡単な設問に答えるだけで、セルフチェック形式の病気の目安とすることができます。他の人に相談する必要もなく、自分自身で早めの医療機関への受診を決めることができるのでとても便利です。